上杉学のライター日記

つれづれコメント

Twilioの米NYSE上場で振り返る『ソフトウェア化』の波

クラウドベースの音声通話基盤を提供する Twillio が米・ニューヨーク証券取引所に上場を果たし、新しい時代の扉を開けた。

上杉は実際、このニュースを非常に感慨深い心持ちで受け止めており、そのワケを今回は共有したい。

まあ先に、端的に本質を述べておけば、『ソフトウェア化』進展の象徴だと、TwilioのNYSEでの株式公開を解釈でき、無意識にその動きを追いかけてきた一人として、感じるものがあるということだ。

ただ、そもそも「ソフトウェア化」といえば、IT界隈では非常な有名人のマーク・アンドリーセンについて語らねばならない。1994年当時には革新的だった、テキストと画像を同一のウィンドウ内に表示する最初のウェブブラウザ『モザイク』を世に出したアンドリーセンはかつて、「ソフトウェアが世界を食む(software is eating the world)」と言って、ソフトウェア制御範囲の世界中のあらゆるものごとへの波及を論じて見せた。今でもよく論及されるアイデアの一つとなっており、Twilioがその一つの帰結であるともいえるのだ。

では、Twilioはいかなる、ソフトウェア化との接面を持っているのだろうか。その問いに答えるためには、Twilioのプロダクトを概観するのが最もいい方法だろう。簡単に言ってしまえば、同社のプロダクトは「ウェブで簡単に通話サービスを作る基盤」で、中にはたった4行のコードで、電話の簡単な受け答えを自動で行わせることもできるのだ[1][2]。

注:Twilioのように簡単なコードでサービスを作れる枠組みが注目されており、同プロダクトでは「REST」として知られる設計ルールに基づいている。詳しくはコチラ

「それの何がすごいの?」という疑問がどこからか聞こえてきたわけだが、考えてもらいたい。物理的なボタンを押さなくて良くなっていないだろうか?自分達が電話をする時、少なくともガラケー(もしお好みならフィーチャーフォン)では、電話をかけるためには、ボタンを押して番号を入力しなければならなかった。それに対して、現在主流になっているiPhoneなどのスマホであれば画面に1~9の番号と、シャープなどの記号が表示され、それをタップすることで番号を入力していることだろう。

つまり、ボタンの物理的な構造が、スマホのタッチパネルの画面表示に代替されてしまったということであり、ボタンと言う構造がソフトウェアに置き換わった(ソフトウェア化された)と受け止めることも十分にできる。ネットライクな仕組みとして、実現できるのもポイントの一つだ。

過去の経緯をたどれば、マーク・アンドリーセンが「ソフトウェアが世界を食む」との言葉をものしたのは、2011年、ウォールストリートジャーナルへの寄稿の中でのことで、実際、Twilioもアタマの中にあったのかどうかまではわからない。しかしながら、「ソフトウェア化」の流れにTwilioを位置付ける日本人IT識者もおり、それが株式公開という広く開かれた市場に認められたのはまさに、画期的だと言えるだろう。上杉はそういう心境だ。

実のところ、「ソフトウェア化」はインダストリー4.0という側面や、3Dプリンターという新たな製造装置ともかかわりがあり、既存のバリューチェーンを大きく書き換える潜在力を秘めている[3][4]。が、語ればきりがないので、詳しい内容はまた別の機会に書くことにしたい。

References:

[1] ASCII.jp:たった4行で電話が作れるAPI「Twilio」とは? (1/2)|Twilioではじめるクラウド電話開発

[2] ASCII.jp:Twilioでコードを書かずに電話プログラミング! (1/2)|Twilioではじめるクラウド電話開発

[3] インダストリアルインターネットの機会と課題‐インダストリー4.0 | PwC Japan

[4] デジタル・インダストリー4.0 |自動車・産業機械業界インサイト・プログラム|アクセンチュア